年金納付

 年金の納付をするために銀行へ出向きました。色々と記入することが多くて悪戦苦闘をしていると、背後にいつの間にやら人が立っていました。僕の背後をとるとは、貴様何者だ!と振り返ると、腰の曲がったおじいさんでした。そこにいるまで気配を感じさせないあたり、さすがに熟練者の身のこなしでした。
 彼は僕の手元を何気ないそぶりでちらりと見ました。彼からは、丁度年金納付についてのお国からの説明書が見えたはずです。
 刹那、鋭く触れれば切れてしまいそうな眼光がご老人の両眼から放たれました。その眼差したるや、死の飛び交う戦場を駆け抜ける男の瞳でした。僕は戦争を体験していません。その緊張感だけで危うく腰が砕けるところでした。
 緊張もほんの一瞬。すぐに彼は元の柔和な好々爺に戻っていました。ですが、その微笑は如実に語っていました。
「私達のため年金はしっかり払いたまえよ」
 と。
 払います。たとえ自分がもらえなくとも。お国のために命を捧げたあなた達を誰が見捨てられるというのですか。
 さあみなさんも二十歳になったら


年金を払いましょう!