人生は五円玉の穴から覗く景色のようだ。そして、人間はその五円玉だ。


 1平方センチメートルにも満たない小さな五円玉の穴でも、目を近づけて見ればほとんどすべてを見渡せます。たしかそんな昔話がありましたね。若者はそれで広大な領土を殿様から譲って貰っていました。
 離れていては小さな小さな穴だけれども、近づいて注視することで無限の世界を見渡せる可能性があるわけです。
 一見理解しがたい人や事態でも、近づくことで理解できるのです。
 ですが、広大な領土を見渡している限り、五円玉そのものを見ることはできないのです。少し離れてみなければ、五円玉に稲穂が描かれていることにも気づけないでしょう。
 また、例え離れていたとしても穴の向こう側に注意を向けている限り、稲穂は見えません。
 五円玉はまさに自分自身です。
 世界につながる穴に近づかなければ世の中は見れない。
 外ばかり見ていては自分が見えない。
 どちらを選べという話ではありません。どちらも五円玉によってもたらせる景色だと知っていることが大切なのです。