美味しかったです。ご馳走様です。

 3年余り勤めたバイト先でふぐをご馳走になった。ふぐと言えば河豚である。それはもうふぐは河豚以外の何物でもなく、刺身や鍋に姿形は変えていましたがやはりふぐでした。
 ふぐなんてものは庶民が決して口にすることのできない超高級食材、一昔前にはふぐを巡って国が滅んだりなんかした程の代物である。それをしがない大学生のアルバイト風情が食べるなんて、これはもう天変地異をも凌ぐほどの大事件なのだ。
 一口刺身を頂いたその時、僕の口が脳が全身が『美味しい』と訴えたのだ。ふぐと僕が奏でるシンフォニーが全身を響き渡った瞬間でした。そして次の瞬間には『こんな美味しいものを食べて誰かに後ろから刺されたりしないか』と不安になり、コンマ数秒後には『刺されたとしても本望である』と思っていた。我ながら思考が吹っ飛んでいるが、それだけの感動があの空間には溢れていた。
 とても美味しかったです。ありがとうございました。ご馳走様です。一生の自慢にして生きていきます。