やきとり
会社の前に焼鳥屋さんが来ていた。
唐突にそこで商売を始めたらしい。
煙たいのでいい迷惑である。
開店セールということで通常の半額だったため、試しに1本だけ買ってみることに。
お兄さんに注文をして、焼きあがるのを待つ間にも物珍しさからか客がちょこちょこと注文をしていく。
焼いている人はジーパンにシャツという大変ラフな格好であり、非常に胡散臭い人物である。
エプロンすらしておらず、清潔感にかけているし、何より胡散臭い。
これは、売れるのはセール期間中だけであろうなあ、なんて失礼なことを考えていると、小学生が群れをなして買い食いに現れた。
硬貨を握り締めて、3種類しかない焼鳥を必死に選ぶ姿はなんとも微笑ましい。
ほっこりとした気分で、焼きたての鳥を頬張る小学生を見守る僕。
小学生が全員男の子で助かった。女の子だったら通報されていたかもしれない。
そんな小学生の一団が立ち去ると、こんどは幼稚園くらいの男の子の手を引いた若いお母さんが登場。
今晩のおかずにするのか、沢山お買い上げ。
怪しげな店員に千円札を手渡す男の子は僕の中の父性を容易に呼び覚ました。
何て可愛いんだろうか。
仲良く手をつないで帰る母子を満たされた気分で見送った。
その後も、杖をついたお婆ちゃんや、30代くらいの美人お母さん、娘にねだられるお父さんと、色々な人が訪れては去っていった。
その全てを焼鳥屋の前で見ながら、思うことはただ1つだけ。
僕の焼鳥は、いつ焼けるんだろうか。
それだけである。
結局、店が一息ついたタイミングで
「ご注文されてましたよね? ももを6本でしたっけ?」
というお言葉をいただき、無事に焼鳥を買うことができた。
注文から実に30分後の出来事であった。
味は普通で、ところどころ焦げ臭かった。
二度と買わない。