逃走

 現実から逃げます。
 明日からスーツを着なければならないなんて夢に違いない。
 夢だ。夢だ……。


 ここ2週間ほど夢から覚めてない気がする。
 早く冷めればいいのに。


 でももしこのまま夢から覚めなかったとしたら、これが現実であるのと変わりはないのではないだろうか。
 永遠に続く夢の世界ならそこが僕の生きる世界に間違いはないのだから。
 それに夢であるなら自らの意思で思い通りにすることも可能だ。
 そう考えれば悪夢のような現状もサクセスストーリーの一節と捉えられる。
 全ては予定調和に収束し、必ずや輝かしい未来が待ち望んでいるのだ。
 おとぎ話ならそこで「おしまい」であるが、生憎とこれは覚めない夢。
 永遠に終わらない幸せを享受できるではないか。


 ははっ。寝るか。