はじめて

 初めてのおつかいを観た。ちびっ子がかわいいとか、泣きたいのを我慢して頑張ってる姿に思わずほろりとか、間違いだらけの買い物にクスリとか思うことはまったく全然これっぱかしもなかった。ああいう頭の悪い甘えた御子は性根から叩きなおす必要がある。放送の最中、僕は終始自分の子供をどう育てるかの計画をたてていた。
 とりあえずはその身に余るほどの深い愛情を注ぎ込もう。これは子育ての基本だ。親の愛情を全身で感じて育った人間は悪い人にならない。だが、愛情と甘やかしは別問題だ。躾は徹底的にやらねば。第一に好き嫌いは許さない。嫌いだからというのは食べない理由には決して成り得ないことを教えるのだ。かくいう僕にも嫌いなものはある。青臭い野菜、特にセロリとふきはどう転んでも好きにはなれない。しかし出されれば食べる。そこが大切なのだ。人間やっぱり嫌いなものはあるものだ、それに鼻をつまむのではなく迎え入れないといけないと教えてやるのだ。
 色々色々考えたが、僕の血を引く子供が生まれることはないことを思い出した。このままでは折角の計画がただのゴミである。どこからか孤児を引き取ろうと真剣に思った。