思い立つ

 今朝ふと思い立って教習所に行くことにした。普通車の免許を取得する心積もりである。
 午前中にS君とミッションをこなしながら必要な書類とお金をかき集めた。銀行3件を周りようやく30人の福沢諭吉さんにご足労願うことができた。
 S君と別れて一路セイコーモーターへ赴く。そこは受験をしない馬鹿高校生たちやらで賑わっていた。迷惑だな、と思いつつも高校生とは決して目を合わせないようにびくびくしながら受付をする。
 しばらくお待ちください。という言葉とともにお姉さんは姿を消した。どうやら裏で入所手続きをしてくれるようだった。僕は素直に待った。10分待ち、20分待ち、30分待った時点で当分呼ばれることはないなと覚悟を決めた。高校生たちが大勢なので忙しいのは目に見えていたので僕は大人な紳士な態度で待ち続けた。
 だが、あまりにも暇だったので隅に設置された待合席でちょうどやって来た高校生二人組みの会話を聞きながら待つことにした。彼らはいかにも「地元のヤンキーです」と顔で言っているかのようにそれっぽい容姿をしていた。僕は髪の毛色が黒ではない人間の顔をまともに見ることが出来ない小心者なので会話のみに聞き耳をたてた。
 彼らは頭の悪そうなしゃべり方で頭の悪そうな声を出し頭の悪そうなことを言っていた。彼らの知能レベルではこれが限界なのかと思い至る。あとでレポートにまとめてみようと思案しているとなんと彼らが僕の隣に座ったではないか。焦る僕。咄嗟に目をつぶり寝たふりをした。心の中では「嘘です。馬鹿だな、なんて思ってないです」と呪文のように繰り返していた。
 必死の念じが通じたのか、意識の外に彼らを追い出すことに成功したとき、僕は自分が本当に眠っていたことに気が付いた。
「カノソ君」
 僕を呼ぶ声で目を覚ました。ようやく手続きが終わったのかと目を開くとそこは僕のバイト先であった。知らぬ間にバイトに来ていたのか?!と戸惑うが、仕事をしている内にどうでも良くなる。
 明日もう一度教習所に行かなければいけないなと思った。