みっどないとらんなうぇい

 早朝から教習所に出向き“適性検査”とやらを受ける。
「問.故意に人から仲間はずれにされることがたびたびある」
 この質問には舌を巻いた。高校時代なら迷うことなくYesと即答しているところであったが、今はどうかと言われると分からない。僕を小馬鹿にする輩とは付き合いがないのであのころとは違うわけで。
 悩んでいるうちに検査は終了した。いつか答えが出たら路上講習中にでも教官に胸の内を打ち明けようと思う。
 夜には習い事の特別練習があった。規則違反すれすれの練習らしいので毎週どきどきである。
 夜の8時の暗い道を自転車で風を切った。僕の住む場所を知っている人は分かると思うが、道に街灯が少ない。充満した高濃度な闇の中で僕はしゃかりきにペダルを漕いだ。荒くなって吐く息は黒のキャンバスに白い絵の具をにじませた。
 ふと空を見上げると、電柱もなく開けた夜空が僕を待っていた。
 雲が多くて、雲間の星がはっきり見えて、受け月の月明かりが雲に半分隠れて朧月となっていた。
 涙が込み上げた。耳に流れ込む『月下の散歩 song by Ritsuko Okazaki』が、いつもより綺麗だった。
 このままどこまでも、自転車を漕ぎ続けられるなら幸せかもしれない。本気でそう感じた。
 あ、僕の幸せはこういうことだったのか。そう気がついた夜の道だった。