冴えない

 最近不安で不安でたまらない。何に不安なのかといえば、夏の旅行の幹事になってしまったことにであった。そんな大それたことが僕に勤まるはずがなかった。僕が幹事になってしまったときの女性陣の落胆の表情は生涯忘れられないだろう。僕には彼女たちの期待を裏切らない結果を用意する絶対的な自信がある。
 僕は高校時代は目立たないポジションで息を潜めて、事なかれ主義で過ごしていた。それは中学時代のトラウマのせいであった。このことを人に語る気はさらさらないので詳しくは言えないが、人の上になって舵をとるようなことから逃げ回っていたのだった。
 怖くて怖くて仕方がなかった。息をしているだけで、クラスメイトに怒られるのではないかという危惧が常に付きまとっていた。だから教室に自分の机がなかったときにも何らかのアクションを起こすことはなかった。いつも嘘ばかり書いているが、机がなかったのは紛れもない事実である。


 別に暗い話をしたいわけではないので切り替えよう。
 幹事になったからには最大限の努力をしようと思うわけで。というかまだまだ先の話なのに、今からおたおたしている僕がかなり異常なのは間違いないのだが。
 とりあえず、ほぼ男性のアドレスしか登録されていない僕の(不)携帯電話に女子全員のアドレスを記録したいと考えている。一応、前回福幹事さんからリストは頂いたのだが、個人情報取り扱いのうんたらを考えると、このままこれを使うのはいけないことではないだろうか、と思い悩んだためであった。
 僕以外の人間ならば普通に使えるであろうが、僕は違う。いきなり頂いたアドレスに送信しようものなら「どうしてこいつがわたしのアドレスをしっているのであるか。気持ち悪いのである」と異口同音に恐怖し、次々とアドレス変更を行うであろうことは火を見るよりも明らかであった。もしかしたらすでに僕とアドレス交換をしている人も便乗してしまうかもしれなかった。
 それは流石の僕でも悲しいので、今度あるらしいOB・G会のときに直接教えてもらい相手方の承諾を得た上でメールを送ろうと目論んでいるのだ。そのことを憐れにも相棒となってしまった幹事さん(自分のことながら、本当にこんな奴が相方なのは可哀想である。僕なら当の昔に思いつめてリストカットをしているだろう)にメールにて相談したところ、返信が途切れた。