勝負の朝

 いったい僕は人生で何度勝負の朝を迎えることになるのか。今朝も勝負の朝であった。引きこもりの実力を見せる日。仮免前技能検定の日である。
 昨晩からの興奮のため、5時ごろに起床し軽い運動をした。椅子に腰掛けて半クラッチや発進停止の手順を入念にシミュレートする。苦手なハンドル量についても繰り返し確認を行い万全に備えた。
 教習所につくと一気に緊張が高まり、順番待ちの間に眠ってしまった。頭痛と吐き気に耐えながらの苦しい眠りであった。このときになってようやく自分が緊張しているということに気が付いた。夢のなかで大空を見上げた。
 検定のことはほとんど覚えていない。覚えているのは巻き込み確認の時に視界に入る後部座席に座っていた次の受検者の顔だけである。かなりの男前さんであったと記憶している。
 結果としては無事合格ということで、ほっとした次第だ。来週の学科試験に合格すればようやく仮免許を取得できる。今度は路上教習の始まりである。僕には無理な気がしてならない。