殴られた

 蛋白質を弄ぶ実験が早く終わったので、今日は明るいうちに家に帰ることができました。ウキウキとした足取りで電車に乗り込みS水君とN村さんとの三人で『いちご100%』について語り合いました。やはり、さつきのセリフが格好良すぎで笑えるのは僕だけではないようです。高校生活は悪魔が微笑む時代なのでした。
 彼らと別れて別の電車に乗り換えると、席が空いていました。脂ぎったおじさんの隣でした。うん十年後の自分の姿を見ている気がするので、おじさんはあまり好きではありません。が、早起きした疲れもあったので座ることにしました。腰を下ろして一息つこうとすると脇腹に痛みが走りました。
 何が起きた?!
 軽いパニックを起こしながら痛む側腹部に目をやると、なんとおじさんの肘が突き刺さっていました。みごとな肘打ちです。というか、本当に痛いし!
 おじさん、なぜ…
 答えは結局分からず仕舞いで、気まずい車内を後にしました。何か気に触るようなことは言っていないし、こちらから危害を加えたりはしていません。そうなると、僕の顔が気に入らなかったのでしょうか。人に好かれる顔貌をしているとまでは思っていませんが、少なくとも見ただけで吐き気を催す様な代物ではないと思っていました。どうやら勘違い甚だしかったようですね。今まで僕の殺人フェイスに耐えてきてくれた皆さんに謝罪と感謝をします。ありがとう、ごめんなさい。
 しかし、肋骨にめり込むまで殺気を感じさせなかったあのおじさん。只者ではなさそうです。もしかしたら、僕の顔の気持ち悪さに憎悪を抱いている人が送り込んだ刺客だったのかもしれません。一撃を入れた直後に僕が直視したため、あまりの不快さに気を失っただけだった可能性も大いにあります。おじさんはあの後ずっと寝てましたし。そうなると、今後は身の回りには気を配らないといけないなと思いました。