無理な気がしたお昼過ぎ

 実験レポートを作成しなければならない。僕はその使命を背負っていた。これは逃れようの無い運命、僕がこの世に生を受けた理由そのものであるといっても過言ではない。そう教授に諭された。
 生きてる意味を知らされた僕はさっそくレポート用紙を用意した。そして眠った。机に突っ伏して泥のように眠り続けた。おっと、勘違いしてはいけない。レポートが嫌で現実逃避をしたわけでは決して無い。一見すると只居眠りしているようでも、脳内でレポートに書くべき内容をまとめることができるのだ。つまり僕は眠りながらも勉学に勤しむ学生のお手本のような存在なのである。
 学内にて、同じ実験をしていた女子と会話する機会があった。彼女はいかにレポートが大変であるか、いかに努力しているか、今どこまで書いたかを僕に話してきた。共通のレポートを書いている僕と苦しみを共有したい風であった。僕の調子はどうかと聞かれたが、僕は本当のことが言えず、同じくらいしかやってないよ。と嘘をついた。精一杯の見栄と虚勢であった。
 彼女と別れた後、しばらく真っ白なレポート用紙を眺めた。紙はあまりに真っ白であった。僕の汚い字で汚したくないなと思った。