それぞれに悩むときがあるのだから

 お昼、いつも通りのメンバーで食堂の新商品を頂いていました。窓の外は叩きつけられる大雨の乱舞で山の下の街並みも見えないほどでした。僕が昨日のサンクリで会った人から頂いたゴーヤジュースに身悶えていたときです。ふと窓際の席で食事していた女性二人が目に留まりました。
 女性の一人は泣いていました。堪え切れない感情の高ぶりにどうすることもできず、ただ泣いている。そんな悲しい涙のように思われました。隣の席の女性は泣きじゃくるその人の髪を優しく撫でながら、しきりに励ましの言葉をかけているようでした。
 ひときわ雨脚も強まって女性の涙も激しさを増すのでした。
 なぜ彼女はないているのでしょうか。僕にはさっぱり分りません。
 ただ、悲しいのなら泣きたいのなら泣きたいだけ泣けばいいと思います。
 山の天気は不思議なもので、雨が少しばかり弱まったかなと思ったら青空が覗き、太陽が雲間から光を届けるのでした。
 彼女は泣き止むことを知りませんでしたが、雨は上がろうとしているです。
 雨は次第に大地に染み込んで大いなる実りを結びます。人だって同じです。悲しみは心に染み渡ってきっと恵みになるのです。
 ――止まない雨はない
 そう彼女に告げて僕らは食堂を後にしました。聴こえていたかは知りません。いつかは自分で気づくことですし、少しでも手助けになっていたらと思います。


 友人のY川さんが僕の言動に酷く傷ついていたそうです。それを聞かされたとき驚きのあまり笑ってしまいました。本人にしてみれば笑い事ではないわけで。人を馬鹿にしてはいけない、と反省しました。


 帰宅するとガス給湯器がその人生を全うしていました。14年間お疲れ様でした。ぜひとも今晩のお風呂を終えてから生涯を終えて欲しかったと泣きつくと、一時的に息を吹き返してくれました。そしてすぐに力尽きました。給湯器さん、ありがとうございました。