我が家のガス給湯器が再び沈黙してしまった。話しかけても引っ叩いてもお菓子でご機嫌をとってみてもちょっと知らん振りしてみてもうんともすんとも言わないのであった。
 仕方がないのでお風呂屋さんに行くこととなった。しかし残念なことに僕には明日提出のレポートがあった。お風呂に外出する時間などないのである。汗もかいたし明日も学校だしバイトもあるけど、こればっかりは仕様がないのであった。
 結局下着を握り締めて銭湯へ行った。僕はひたすらにレポートから逃亡したかったのであった。今は汗も流せてさっぱりしたので早く眠りたい気持ちで一杯である。驚いたことに足を運んだ銭湯、天然温泉であった。さすがは“神秘の町芋緑”温泉まで湧いていたとは…もはや何でもありである。夜更かしはお肌に良くないらしい。折角温泉でゆで卵のように艶やかな肌になったので、それは勿体無いではないか。やっぱりもう寝ることにしよう。レポートは明日の朝、授業中に仕上げればいいではないか。人間、一度逃げ出すともう逃げる以外の選択肢を失ってしまうのだと思った。