ランチ

 レポートの提出を済ませたら、今日は残りがオフであった。空いた時間でS水君とともに、中央特快が止まらないため時間帯によっては負のオドで満ち溢れている流民と悲痛の街『西国分寺』駅でランチをすることにした。毎日この駅を利用していたが、実際に降り立つのは初めてであった。つまり、これが初体験というわけである。
 廃墟が立ち並び、死を連想させる灰色に覆われた寂れた街並みのなか、駅だけは栄えていた。朝夕の通勤時間にはこの駅は“乗り換え駅”として活躍しているのだ。誰も降り立ちはしないが駅だけは立派なものに成長したという寸法である。そんな駅ビルに開かれていたパスタ屋で食事することにした。
 意外なほどに美味しい生スパゲティー(?)であった。湯で具合も申し分ない。しかし、スパゲティーの味よりも近くに座っていた女の子がグラスを落としてしまいそうで、気が気で無かった。もし手を滑らせた場合、僕は女の子を庇うべきか、それともグラスをキャッチするべきかと食事を終えるまでずっと悩んでいた。結局女の子はグラスを落とさなかった。
 お店の脇でひっそりと売っていたスクラッチ宝くじを衝動的に購入するも、惜しいところで外れていた。もう二度と宝くじは買うものかと思った。


 夏旅行が近づいている。早く神津島の海岸線を自転車で駆け抜けたい。つまり現実から抜け出したいのだろうと思われる。僕らには鎖が多すぎるのだ。