まじ騙されたし

 鴻巣駅に降り立った僕はまずあたりを見回した。わざわざこんな交通の不便なところに遥々やってきた理由は他でもなかった。免許取得のためである。
 免許センターはどこかと考えていると僕の手を引っ張る何者かが現れた。彼女は試験を受ける人はここで受付だと案内してくれた。なんと親切な人がいたものかと付いていくとそこは怪しげな建物であった。軒先に出されたパイプ机に申し込み用紙があり、そこに名前と電話番号を書けと言うのである。もしこれが本当に免許取得のための用紙なら真実を書かなければならないが、このときすでにこれが詐欺の一種であると感づいた僕は偽名と適当な番号を記入した。これが本物なら謝って書き直せばいいだけの話である。案の定、半分くらいの人はこの怪しげな勧誘を無視して進んでいた。頭上を見上げれば
 『ウルトラ教室』
 (゜Д゜) ハア??
 あ〜あ騙された〜。とそのまま立ち去ろうとすると僕をここまで引っ張ってきたおばさんが立ちはだかった。彼女はなんとか怪しげな講習を受けさせて怪しげな教材を買わせたいらしかった。その必死さが口元に顕著に現れていて面白い顔になっていた。
 あくまで穏便に事を済ませたかったので、ちゃんと勉強してきたのでいまさら必要ないです。との宗を伝えた。これで本物の免許センターに申し込みにいけると思いきや、


 「試験難しいよ。10パターンあってね。まだ時間あるよ。ここで情報得ていくのよ」


 聴く耳を持っていないようだった。いまだに試験が難しいと思うようでは路上に出て運転する資格はないし、テストのパターンがなんであれ解けるようでなければ実際には何の役にもたたない知識でしかないし、余裕をもって到着できるようにきたから時間があるわけではないし、満遍なく知識を蓄えた人間にいまさら直前情報も糞もあったもんじゃないと思うのですが。いかがでしょうか、ウルトラ教室さん。ということはおくびにも出さず、僕は全然問題ないんです。と答えて立ち去ろうとした。しかし、


 「でもね、今回残念な結果になってもここで問題集買って行けば見直しもできるし、次回にむけて勉強ができるよ」


 「なるほど、僕が落ちる事は確定しているんですか。あなたの目には僕が落ちる人間に映ったわけですか。失礼にもほどがありますよ」


 ちょっと腹が立ったので静かにそう言ってやると彼女は黙って僕を解放してくれた。恐るべし免許取得。ウルトラうぜー。


 色々あって免許には無事合格しました。気にしてくれていた皆さん、ありがとうございました。無事故無違反で安全運転に勤める所存です。
 これから鴻巣に行く人はウルトラにだけは注意して欲しい。本当に失礼な人たちである。