200円→40円

 面白かったので購入したマンガは一度読めば満足する内容であったため、売り捌いてやろうと前々から計画を立てていた。今宵から遡ること一ヶ月、古本屋の広告に高額買取200円の文字を発見した時は思わず小躍りしてしまった。あの日から本屋への最短ルートを調べたり、本を運ぶために必要な労力、バイトしている人間の観察、蔵書のバリエーション、客層、混む時間帯、スパゲッティの湯で具合とお湯の量、などなど調査に調査を重ねて実行の機会を探っていた。
 そして今晩が任務遂行日に最適と判断をくだしたのだった。大学で大腸菌を培養した帰り道、僕は本屋の門を叩いた。買取カウンターへと案内される間の記憶はあまりの緊張に飛んでしまった。4冊で800円になる買取金額、これで明日からブロッコリーが思いっきり食べられるのかと思うと嬉しくて涙が出た。何も言わずにハンカチを差し出してくれた店員さんの優しさに、僕の選択は間違いではなかったことを知った。
「4点で160円になります」
「売るのを辞めます。返してください」
 即決即答。広告期間は当の昔に過ぎてしまっていた。
 遅くなった晩御飯はグラタンだった。ブロッコリー……いやカリフラワー? 緑のはどっちだか忘れたが、グラタンにはそれが入っていた。塩辛くって美味しかった。決して涙のしょっぱさではない。それはもう断じて違うのである。