朝早いと色々あります

 早朝、誰もいない研究室に忍びこみ実験をする。
 誰か来やしないかとビクビクしながらも、色々と質問したいこともあって誰か来ないかと期待していた。
 小心者ゆえに誰かに見られるのを恐れているが、今やっていることの成否を確認しないと先に進めない小心なので仕方がない。
 丁度よく現れたネナコフさんにリファレンスについて教えていただいて無事実験は終了。
 あとは先生が来る前に脱出を、と思った矢先に先生ご到着。
 帰ろうと電気を消した暗いなかで、出くわした先生に驚いて硬直してしまった。
 硬直具合で言えば、小学生を狙った変質者が出回っていますと警察がパトロールしているところに、小学生と手をつないで歩いているのを見られたときくらい硬直してしまった。
 断っておくが、僕はリアルには何の興味もない。
 電気つければ? と問われ、あぁうぅとうめき声をあげる僕の気持ち悪さときたら先生も苦笑いを浮かべるほどだった。
 これから帰るところです! となんとかそれだけ言って脱兎の如く逃げた。
 帰りのバスでは乗客は僕一人だった。
 当然である。こんな時間に帰りのバスに乗る奴なんて、よっぽど馬鹿か変態だけだ。
 どちらも僕に当てはまるので、なんら問題はない。
 運転手さんに話しかけられたりしたが鉄仮面でこさえた爽やかな笑顔で適当に返す。


 家に帰って気付いたことがある。
 実験方法間違ってる……。
 各サンプルごとに基準を設けてやらないといけなかった。
 まったく意味のないデータが手元に残った。
 今度先生にこのデータを見せないとならない。
 既に生きた心地がしないのはどういうことだろう。
 いっそ先に身を投げたほうがいいんじゃないだろうか。