砕け散ったブロークンマイハート

 もう駄目だと零した。
 僕にはもう耐えられない。
 もうね、ほら、壊れちゃったんだよ。


 コンクリートの床に音もたてずに欠片が散らばる。


 頑張ったけど、ダメだった。
 ダメだってわかってたけど、頑張っちゃった。
 馬鹿だろ? 分かってるのに、忘れるんだ。
 今回は大丈夫かもしれない、なんて、なんでそんなこと思っちゃうんだよな。
 もう何回繰り返した?
 もう何回挫折した?


 僕のすべてだったものは無数の欠片となって、沈黙を返す。
 まだ、僕はすがるのだろうか。
 大丈夫だよって言ってくれるのを期待しているのだろうか。
 僕は馬鹿だ。
 分かってることを期待している。


 強く生きろ。


 欠片を拾い集める。 


 ちょっと、無理かなって思う。


 大きな欠片と、中くらいの欠片、小さい欠片は諦める。


 それでもやるんだ。
 うん。


 迷った時は振り返ってみろ。
 そこに答えはあるはずだ。


 集めた欠片を不器用にセロハンテープでくっつける。


 迷っているんじゃないんですよ。
 ただただ、目の前の現実はかなしい。

 
 悲しい時は思いっきり泣けばいい。
 その分、また頑張れる。


 あっちこっちパーツが足りないのに、ナンバー入りのジグソーみたいに、淀みなく欠片はつながっていく。


 僕は、頑張っていいのかな。


 頑張っちゃ行けない人間なんていない。


 そう言って、ケンジは僕に“心”をくれた。
 ボロボロで、欠けてて、あっちっこっち穴だらけで、セロハンテープでつないだ心。
 僕にぴったりな心。


 もうちょっとだけ、頑張ってみるよ。
 僕はこんな風に、欠陥だらけの心になってしまったけれど。
 壊れた心のセロハンテープが剥がれるまでの時間を、君がくれたから。


 壊れてなんかいない。
 皆それを抱えて生きているんだ。
 ボロボロで、欠けてて、あっちこっち穴だらけで、セロハンテープでつないでる。
 すぐに壊れそうで、とっても不格好で。
 恥ずかしくて人に見せたくないけれど、認めてくれる人を求めてさらけ出す。


 壊れてしまわないですか?


 もちろん壊れる。


 そしたらお終いです。


 本当に終わったかい?


 そして、ケンジは宇宙へ旅立った。
 僕は知っている。
 ケンジは、僕の壊れた心の修復不能な小さな欠片をひとつまみ、自分の心にくっつけたのを。
 だから、僕も宇宙へ行ったんだ。
 ビバ宇宙。
 そう言って新居を求め、悪徳不動産に騙されて彼方の荒廃無人惑星を35年ローンで買ってしまったケンジが、僕は本当に不憫でならない。
 それ以上に、ケンジの奥さんのトオルさんのこれからを思うと、僕の心は砕け散りそうに痛むのです。