被害妄想癖は治らないです
先日新しいエコバックを入手しました。
スーパーで買い物をする際、レジ袋をもらわないとエコポイントをくれるのですが、そのポイントが貯まるとエコバックと交換してくれるとのことだったのです。
レジ袋をもらわずに買い物をしている人に、エコをしたご褒美としてエコバックをプレゼント、というナンセンスさは目をつぶりましょう。
兎にも角にも僕は二つ目のエコバックを手に入れたのです。
TOMOに見せびらかして自慢したのですが、反応は今一つどころか今二今三だったのが悲しいところ。
彼には理解されなかったエコバックを片手に今日も買い物に行きました。
僕は最近スーパーのお勤め品ラックを整理することにハマっています。
初めてお勤め品ラックを見たときは、賞味期限の迫ったお菓子やドレッシングやマイナー商品を乱雑にひっくり返しただけのラックだったのですが、今では商品は整理整頓され実に見やすく陳列されています。
僕がやったことですけど。
乱雑だったころに比べ明らかに商品の減りが早く、なんともやりがいを感じさせてくれるのです。
そんなわけで今日もラックを整理していたところ、以前バイト先に勤めていたパートの方に声をかけられました。
僕ときたらどう見てもお勤め品ラックを漁っているようにしか見えません。
何とも言えない羞恥でした。口早に適当なことを話し逃げました。
今思えばそれほど恥ずかしいことではなかった気がします。やたら慌てたことの方が恥ずかしいです。
ちょっとしたアクシデントには見舞われましたが無事に買うものは収集し、レジに並びました。
初めて見る女の子でした。おそらくは女子高生です。
僕の胸が高鳴ります。
「キモオタだ、まじキモイ」とか思われたと思うと心臓がバクバクです。
なるべく全然人の目なんか気にしてませんよ風を装ってレジ袋不要を告げました。
ここまではよかったんです。何事もなく通過して、二三分もすればこの子の脳内から僕という存在は消えるはずでした。
イレギュラーというのは、唐突に訪れるからイレギュラーなのです。
「良かったね。ハンサムなお兄さんで!」
後ろに並んでいたおばさんがいきなりとんでもないことを口走ります。
ファッキン!! いや、おばさんをファッキンしたくないですけど。
レジの子は「え、いやそんなぁ」と明らかに対応に困りつつも、本気で迷惑そうに俯き気味になり頬を赤らめました。
これはまずい!
ただのレジ打ちとお客という割り切った関係だったからこそ、僕と彼女の関係は成り立っていたのです。
おばさんはそんな僕らの薄氷な関係に乗り上げてきたトドです。
体格からしてアザラシよりもトドが近い人でした。
「ははは、とんでもないです」
大人の対応でなんとかその場を切り抜けようとしました。
「こんなハンサムが相手なんてほんとにラッキーね。滅多にいないわよ!」
おばs、トドの口臭はたまらなく臭いです。
僕くらいになると、見れば分かります。
このトドは僕のことを持ち上げることでからかっています。
増長する僕を見て笑う魂胆が見え見えです。経験上、そういうのは敏感なんです。
救いなのはレジの子が人格者であったこと。
彼女は僕に対してはにかんだ笑顔まで見せてくれました。
この手の笑顔は影で一緒になって僕のことを笑う奴らも見せていたものでしたが、僕も彼女も大人なので不機嫌な態度などおくびにもださず上辺の笑顔でその場をやり過ごせるのでした。
レジの子はお釣りをきちんと手渡ししてくれました。
とりあえず、この子俺に惚れている、とお約束の勘違いもしておきました。
次回からこの子のレジに積極的に並ぼうと思います。
長い会計を終えて自慢のエコバックに買ったものを詰めているとレジからトドの鳴声がします。
僕の耳には「ハンサム」とかいう単語が聞こえました。
どうやらトドがまたなんか僕をネタにして笑っているようでした。
レジの子は赤らめた顔で何やら否定しているようでしたが、僕には関係ありません。
陰口は聞こえなければ痛くも痒くもありません。
僕は今までの倍以上の買い物が可能になったダブルエコバックに満足して帰路についたのでした。
ところで、ハンサムなんて言葉を笑う犬のハンサム侍以外で久しぶりに聞きました。
とんでもない死語です。
思い出してみると、なぜだか心温まる出来事でした。
正直なことをいえばこのときは、日記のネタができたなーとか考えていました。この手のいじめは慣れっこですから。