大人は卑怯です

 結果よりも家庭が大事とよく言います。
 良かれと思ってとった行動が結果としてマイナス面に働いてしまうのはよくあることです。
 こちらの善意で相手を不快にしてしまったとしても、悪びれることなく「まあ、残念だったな」で済ませてしまうのが僕という人間なのですが。
 過程を説明することを億劫に感じてしまうからそういうことになるみたいです。
 結局、結果がすべてですよ。
 なんとかして良く思われようなんて考えもしません。
 それはもう全然人の評価なんて気にしてませんから。
 ほんとに、気になんて……くっ!


 昨晩深夜に帰宅すると兄様から車を出せとご命令を賜りました。
 深夜3時頃に就寝し、午前5時起床。
 満月も天使の輪を輝かせる暗闇のなか母様と兄様を乗せて駅まで。
 二人の荷物がやけに大きいことに気づいてはいたが、声をかけるタイミングには気づくことはできなかった。
 駅へと消えていく家族の背を、野良猫が遠ざかるのを見つめるような気分で見送った。
 ひとつ吐き出した長い息が白く煙る。
 タバコは吸えないが、こんな光景を楽しむのも悪くないと思えた。
 寒さが身にしみてきたので車に乗り込み大音量でミスチルを聴きながら来た道を一人戻った。
 空には満月が輝く。
 太陽の光を全身で反射して輝く月。
 かつて誰もが太陽に憧れ、月を卑怯者と笑った。
 自ら輝く術を持たない月には他人の輝きを利用する他なかったのだ。
 結果、月はあんなにも美しい光を放った。
 夜という舞台で、月はオリジナルを超えた。
 そんな二人が今同じ空にいる。
 あと数分だけの邂逅。
 二人はどんな会話を交わすのだろう。
 エイトにメールをして眠りについた。
 ひどく眠たかった。