悲しいお知らせ

 鍵は一人でした。


 自分が入るべき鍵がないからです。


 だから鍵穴を探していました。


 もう十数年探し続けています。


 でも見つかりません。


 鍵は一人でした。


 鍵穴がなければ、鍵はただの棒です。


 ある時、友達のカギが気づきます。


 「君の背中にあるのは、鍵穴じゃないかい?」


 鍵は驚きました。


 まさか鍵である自分に、鍵穴がついているとは思いもしませんでした。


 友人が集まって、鍵に自分を差し込みます。


 でも誰も回ることはできません。


 一体、自分が開かれたどうなってしまうのか、鍵は次第に怖くなりました。


 それ以前に、まるで開かない自分の鍵穴にうんざりもしていました。


 自分は役に立たない鍵で、決して開かない鍵穴なんだ。


 鍵が悲しんでいると、鍵職人がやってきました。


 友人の鍵が呼んできてくれたのです。


 鍵職人は言いました。


 「この鍵穴、君がぴったり合うように見えるよ」


 鍵の探しつづけた鍵穴は、鍵自身だったのです。


 ですが、鍵自身である鍵は、鍵自身である鍵穴に入ることはできません。


 あきたからやめます。