いや、嬉しいんだよ

 チキンズの練習に行ったが誰もいなかった。誰も来なかった。風こそ強かったものの良いお天気で、誰もいないグラウンドはむしろ清々しかった。一緒に出勤したS君と二人、素振りを続けた。
 時期にポツリポツリと人も集まり、そして妖精に出会った。良いお天気だからな、そう思った。


 そういえば、ちょっと前に僕は携帯電話のメールアドレスを変えた。迷惑メールしか来ない携帯電話というのも悲しい。というのが理由であった。ちなみに、高校時代の級友へのメールは98%届かなくなっていた。誰も僕にはアド変のメールをくれなかった。この事実こそ、僕がクラスではぶられていた何よりの証拠だと思った。逆に言えば、これでようやく僕は有りもしない希望に、「はぶられているというのは僕の勘違い被害妄想だ」という一抹の希望もやはり虚像だったのだということが明らかになったのだった。もはや彼ら彼女らを級友と呼ぶのは失礼に値するだろう。
 正直、悲しい。だが、全く社交的ではない僕こそが原因なのだから仕方が無いと思っている。
 そんな僕も弓道部ではそれなりに友達もできた。部活では気兼ねなく話せる仲間がいると信じていた。でもそれも勘違い。友達という想いは僕の一方通行だったらしい。今日、所用でメールを送ると返信は




「あなた誰?」




 ただ、それだけであった。メール相手の彼は弓道部のボス。司令塔。最高指導者。将軍様その人である。彼に認められないことはつまりAチームには入れないことを意味している。僕に友達はいない。そのことに僕は20年生きてきてやっと気づいた。
 気づいたとはいえ、それはにわかには信じられない、信じたくない事実である。そういえば僕は小学生4年生の秋頃に僕は交通事故に遭い頭を打っている。おそらく奇跡的に軽症ですんだと思っていたあの事故で、本当の僕は目を覚まさないまま夢を見続けているのだろうと予想された。4年生といえば10年前である。そんなにも長い時間、植物状態で入院生活を続けていては、さぞかし両親は苦労していることであろう。母様と父様、兄様達や大好きなおじいちゃんおばあちゃんに申し訳なかった。
 早く目を覚ましてリハビリをしたくなった。