実験室の窓から見えた八王子の町は綺麗な茜色に染まっていたので晴れだと思う。

 今週の実験も大腸菌の旦那のご機嫌取りだった。しかし、僕らだっていつまでもうだつが上がらないままでいるつもりはなかった。そしてついに今回、僕らは大腸菌の食事に毒(抗生物質)を盛ってやりました。もがき苦しむ大腸菌の姿が非常に愉快でした。これが加虐の悦びなんだなと思いました。
 帰り道にまた道草を食べた。今日の道草は『トマトと小海老のスパゲッティ』と『古代(?)ピザ』のイタリアン風味であった。
 僕としては、晩御飯があるしお金が勿体無いので早く帰りたかったのだが、彼らは聴く耳を持たなかった。持たないと言うか、彼は帰ってもご飯がないのだと僕に訴えてくるのだ。僕は彼らの境遇に涙を禁じえない。「僕に遠慮せず、どうぞ食べていってくれ」と告げ、僕が帰ろうとすると、なぜか彼らも一緒に帰るのだった。彼らは類を見ないほどに仲間想いなので、僕一人を帰すことができないらしかった。そのことはこの3ヶ月あまりに何度も繰り返されてきたやり取りである。明日からは彼らのためにお弁当でもつくって行こうかと本気で考えたりした。
 家に帰ったときにはすでに9時を回っており、遅に帰宅した僕を労う母様はご飯をたくさんよそってくれた。本日2回目の夕食……。料理をした人の心を考えれば、残すなんて選択肢は端から頭にない。美味しく頂いた。
 このままではフォアグラ用ガチョウのような体型になるのが目に見えている。それだけはなんとか避けなければならない。妙案がある方がいましたら、是非ともコメントしてくださると助かります。