さめざめあめ

 雨に煙る街
 肺を満たす香り
 このまま溺れてしまいたい


 21歳になりました。目覚めると盛大な賛美歌が神々しいステンドグラスの光美しい部屋を響かせ、全世界の人間全てが僕の誕生を祝っていました。照れくさい気もしましたが、祝の言葉に感謝の気持ちを返しました。
 実際には深夜1時半でした。
 12時半に就寝し、1時半に目覚めました。朝だと勘違いして朝ごはんの支度をしてしまうところでした。キッチンの電気をつけてからトイレに行ったとき、時計を見て気がつきました。危なかったです。なぜか畳まれている布団を敷きなおし、眠りました。
 目が覚めたので起き上がってキッチンへ行き朝食の準備をしました。朝食を済まし歯を磨こうと洗面台の前にたつと時計が目に入りました。
 3時でした。
 意味が分からないので眠りなおそうかとも思いましたが、なぜか布団が畳まれていたのでやめました。自分では一度だって畳んだ記憶がないのに、全く不思議なこともあるものです。
 気がつくと6時でした。フローリングに突っ伏していたようでした。傍から見れば倒れているようにしか見えなかったでしょうが、幸いにも活動しているのは僕だけだったので、誰にも見られずに済みました。危ないところでした。
 今になって見ると本当に朝食を食べたのか、本当に布団は畳まれていたのか、本当に頭は大丈夫なのかどうかも記憶があやふやなのですが、母様の話ではお皿とカップが流しにおいてあったそうです。どうやら3時に朝食をとるという奇行は現実だったようです。疲れているのかもしれません。
 大学終わり直後に電車に飛び乗り、バイトへと走りました。
 10時まできっちり働いて帰宅すると、僕の好物ベスト3に入るしめ鯖ののったチラシ寿司が夕食でした。ケーキも用意してくれていて、バイトで一緒に夕食をとれない僕などのことを家族は最大限に祝ってくれました。ありがたいことです。
 幸せというのはこういうことなのかも知れません。


 こうして今日まで生きてこられたのも、人間として致命的に欠陥していると言わざるを得ない僕なんかのことを支えてくださった皆様のおかげに他なりません。皆様の温かいお心に、僕は気持ちでしか還元することはできませんが、これからもどうかお願いいたします。
 本当に本当に感謝しております。言い切れないほどにありがとう。