じゃあ二日前の話でも。
朝の通勤ラッシュの電車内。
たまたま偶然女子高生の後ろにはりつき、移動し、観察を続けていたときでした。
こぺっ! ぷろっ!
謎の奇声が車内に響き渡りました。
女子高生がこちらに視線をくれます。若干おびえている目でした。
僕の声帯が発した音波は、確かに人の注目を集めるに足る奇怪さと音量を持ち合わせていたのです。
別に痴漢がばれたわけではありません。
僕の後ろにずっとはりつき、移動し、観察を続けていたおじさんが、カーブの揺れに耐えられなかったのをこれ幸いと僕の背中にフライングボディアタックをしかけたことにより肺の空気が強制的に外に漏れ出したのでした。
ごめんなさい。と言いながらもどこか清々しい顔をしているおじさん。
奇声をあげたキモオタクっぽい僕。
二人に向けられる視線は生ゴミを漁る浮浪者に向けられるそれでした。
女子高生も同様に、1秒で視線を逸らしてくれました。
とても可愛い目をした女の子です。
ただ、胸元のマフラーに値札をついているが気になりました。
その後、僕は咳をしたり伸びをしたりお尻は無事だったかを確認したりと、何とも居づらくなった空気を誤魔化すことに必死でした。
おじさんは知りません。
唐突な事態に対応できるようにとトレーニングを積んできたつもりでしたが、ストーキング中にストーキングされる、なんてシチュエイションは想定外でした。
次はもっとうまくやれると思います。
嘘です。ストーキングなんてしていません。
今日は狂ったようにピアノを弾きました。
弾いたというより、叩いたの方が正しいかもしれません。
それだけでした。