ヒルズ

 昨日はズーヒルギロッポンに行ってきた。
 もちろん仕事だ。
 雪降る街六本木に降り立ち、目を細めてヒルズを見上げる。
 「今日からここが俺の職場か……」
 つぶやきは白い煙とともに霧散した。
 仕事でヒルズに行く男、小石の誕生の瞬間である。


 と、テンションが高かったのは駅から出たところまでで、後は客先デビューで緊張しっぱなしのおしっこちびりっぱなしだった。
 名刺交換しようと、内ポケットに手を突っ込んだらスーツのボタンが弾け飛んだのも、まったく良くない思い出だ。
 一生このことを思い出しては赤面するはめになるのかと思うとゾクゾクする。
 今ほどマゾで良かったと思えたことはない。
 本当にマゾで良かった。